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大砲図小柄(たいほうずこずか)
小柄とは、竹を削るなどの細工用の道具として使われた、日本刀の鞘(さや)に付属する小刀(こがたな)の柄(え)、または小刀そのもののことです。
戦がなくなった江戸時代、武士の持ち物であった刀は、次第にそのデザインも重要視され、精巧で鮮やかな細工が施されるようになっていきました。
刀装具(とうそうぐ)といわれるこうした付属品は、現代では美術工芸品として評価されていて、高い価値を持つ逸品が数多く残されています。
この小柄には、大砲を引く様子がモチーフとして描かれています。大砲は戦国期に西洋から伝わり、砲術が広まった江戸期以後盛んに使用されるようになりました。
先に立った一人が音頭をとりながら、7人の引き手が台車付きの大砲を引っ張る興味深い構図から、当時の武士の鍛錬の様子をうかがい知ることができる貴重な史料です。