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コラム17 都城島津家の女性のたしなみ
都城島津家に伝来した史料の中に、左手に香炉を乗せ、立ち上る香りを楽しむ女性の肖像画があります。22代領主島津久倫(しまづひさとも)の妻梅芳院(ばいほういん)です。
手前に描かれた盆の上に包み紙が乗せられています。中には香木(こうぼく)が納められており、これを一定の作法に従って香りを楽しむのが「香道(こうどう)」です。香をたしなむにも、相当の教養が必要とされていました。いくつかの香りを組み合わせる「組香(くみこう)」という遊びの中に、源氏物語になぞらえて香を組み合わせる「源氏香(げんじこう)」というものがあります。それぞれの香りの組み合わせに、源氏物語の各タイトルが付けられており、香りをかぎ分け、どのタイトルなのかを当てるというわけです。香りに関する知識に加えて、文学的知識も持ち合わせていなければなりません。また用いられる香木も高価なもので、遠く東南アジアから運ばれてきたものです。
都城島津家史料の中には、この香道に関する教科書や香木「伽羅(きゃら)」が残されています。都城島津家の女性たちの教養の深さ、当時の都城島津家の財力を感じさせる史料といえます。