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有水鉦踊りは有水備前守の命日である8月4日に行われる農耕儀礼です。まんじゅう笠を被った鉦3人と矢旗を背負った太鼓9人で構成され、鉦を中心に外側を太鼓で囲み歌い踊ります。踊りの服装や形は、臼太鼓踊りや各地の大太鼓踊りに似ていますが、3種の鉦が主となっている点が特徴です。また、歌詞の中に実盛の名が出ており、全国各地に広がる斉藤実盛の「虫送り」行事の変形とも考えられています。
寛永年間(1624~1644)に、有水地域で稲の虫害や、牛馬の疫病が広がりました。生活が困窮した住民はこれらの被害を有水備前守※の祟りと考え、社祠を建立し、鉦踊りを奉納しました。その結果、その年は災害を逃れて大豊作となり、安穏な生活に恵まれたため、鉦踊りが続けられることになったといわれています。
※有水備前守とは、有水地方を領した伊東方の武将であったと思われ、島津方との戦いで敗戦が続き、天正18(1590)年8月4日に自領の前で馬の足をとられて無念の最期を遂げました